井堂雅夫は、2014年7月はじめ、強い胃の痛みを訴えて検査の結果、進行胃がんのステージ4で、他の臓器にも転移があり、手術はできず、あと半年から一年の命との宣告を受けました。
抗がん剤の入院治療の間も、時間がもったいないと、病室に仕事道具を持ちこんで絵を描き、副作用の手のしびれ、痛みと闘いながら気力を振り絞ってたくさんの作品を生み出し、昨年11月の京都文化博物館での展覧会で、多くの方々に作品をご覧いただき、望みを叶えることができました。その後も1年10か月の闘病の間、最後まで筆を離すことなく描き続けて4月23日、70歳と5か月の生涯を閉じました。
美術大学を卒業したわけでもなく、画壇と呼ばれるものに属すこともなかった井堂雅夫でしたが、だからこそ何にも縛られることなく自由に、そして身軽に独自の技法や道具を使って作品を生み出すことができました。国内外の各地からお誘いをいただいて個展を開き、日本の伝統芸術を次代に繋げたいと発表を続けて来られたことは、本人の生き方にとても合っていたように思います。
70年にわたる人生のすべてを、「絵を描くこと」だけで表現してきたこと、自分の信じる道を一生懸命走り続けてきた姿は、絵が大好きで、みんなで一緒に何かに夢中になり、にぎやかなことが大好きだった子供のころの無邪気な姿と何も変わらず、いつも楽しげに未来の夢を語り、エネルギーにあふれ、周りにまで元気を与えてくれた存在でした。
振り返れば、井堂雅夫は、常に多くの人たちに支えられてきました。
日本をはじめ、世界中の、のべ10万人を超えるであろうコレクターの皆様、井堂雅夫の活動をさまざまな形で支え、広めて下さった、たくさんの応援者、友人のみなさま、そして彫り師・摺り師、そのほか今までに井堂雅夫が出会い、ご縁をいただいたすべての方々に、一同、心から厚くお礼申し上げます。
このブログの更新はできなくなりましたが、金閣寺のギャラリーでは今までと変わらず作品をご覧いただけます。
皆様にはこれからも作品に会いにおいでいただければ幸いでございます。
井堂雅夫は本当に幸せでした。
みなさま、本当にありがとうございました。